アリとキリギリス

体験談

令和の時代はだいぶん変わった様だが、小生が未だ見習いの時代は酷かったな…

厨房内での殴る蹴るの暴力沙汰は日常茶飯事で、要領が悪い奴なんか毎日殴られていた。

まぁ、当時は学校でも教師からよく殴られていたけどね…

見習いで入店して来るのは、多くの場合は未成年だった。

未だ世間の仕組みを理解しておらず、精神的にも未成熟であり、また仕事に対しての姿勢もよく判っていない、ただただ義務的に「そこに居れば良い」と思っている。

何も出来ないのが判っているから、山積する仕事を一つも頼めない。

厨房内の各料理人は自分が担当する仕事を山ほど抱えている。

しかし入店したばかりの見習いに“大根のかつら剥き”が出来るわけがない…

どれだけ言葉巧みに剥き方を説明しても、絶対に出来ないのは明白である。

こういった、“数をこなさないと出来ない…”作業が厨房には多い…

一か月前に入店した見習いは、今日入店した見習いより一か月分の仕事を覚えている。

一か月後には先述の見習いは二か月分の仕事を覚え、後者は一か月分の仕事を覚えた。どれだけ経ってもこの差が縮まる事が無い…

では、一か月先輩の見習いに追い付き追い越すにはどうすれば良いのか…

「その一か月先輩がする仕事の二倍の仕事をこなせば良いのである」

ある料理人は見習いの頃、仕事の帰りに八百屋で大根を大量に自腹で買い、小さなアパートで一人、見様見真似で黙々と練習していた。そして毎日大根を喰って出勤する。

イベントフードの仕事をしていた頃、二~三日の短期間で複数名の学生アルバイトを人材派遣会社を通して雇用する事が多い。

業務開始後、ほんの数時間で出来る子と出来ない子に別れる。

矢継ぎ早に「次は何をしたら良いですか?」と聞いてくる子が居れば、「お手洗いに行ってきます」と云って、どこまで行ったのか二時間半ほど帰って来ない子もいる…

どちらの子も十代後半である。

歩んで来た道がまだ短い人生の中で、どうしてこの様な差が出るのだろうか…

彼らはやがて例外なく社会に飛び立ち、やがて勤めるであろう会社に貢献しないといけなくなる。

会社は、進んで仕事をする人間と、機会を覗ってはサボろうとする人間を見分ける。

何故なら、「あいつはサボってるのに給与が変わらない」→「ならやるだけ損じゃん」

負の連鎖が始まるのを防ぐ為である。

仕事をしない人ばかりになると困るので、会社は容赦なく処断する。

仕事をサボるのは、人としてズルい事だと思う。仕事には定量があり、一人がサボるとそのしわ寄せは確実に他者が被る事になる。

人としてズルい行為を、十代後半にして覚えてしまった経緯はなへんにあるのか…

イベントフードの時に話を戻す。

昼のピークが終わり、少し暇になる。交代で休憩を摂る。

休憩時に小生と世間話。

話していると、ズルい子は今まで幾多の派遣アルバイトを経験している様だが、真面目な子は初めての派遣アルバイトだそうだ。

深く聞くと、体育会系の大学で「アルバイトする位なら練習しろ!」な感じで猛烈な教育方針の大学の様だ。

なので、本来はアルバイト禁止なのだが、時期的に卒業が間近になのでOKが出たらしい。

派遣アルバイトが初めてなので、力の抜き方を知らない。

普段、やっている陸上競技の練習の如く全力で指示した作業に取り組むのである。

逆にズルい子は、数多のアルバイトで悪い経験をしたのだと思う。

過去に派遣先で出会った先輩に「そんなに頑張らなくても良いよ…」と云われたとか。

小生の仕事の場合は2~3日の短期なので、小生が「ハズレを引いたかな…」と消化すれば済むのだが、もし彼がこの姿のまま社会人となった時は苦労するだろうな。

だから、小生は与えられた仕事への熱意なんかを拙く伝えるのだが、響いているかどうかは判らない。

 毎年恒例で元旦の朝に、十年以上まえに小生の所へ短期で派遣された、当時はアルバイトだった子達から年頭の挨拶電話がある。簡単に近況を報告してくれる。

 

 ある者は、某有名な接着剤の会社に勤め部長になった者や、某有名な鉄道会社のある部門の取締役になった者。念願の建築士になった者や開業医になった者など様々だが、共通して派遣アルバイト時代に仕事が出来た者ばかりだった。

 

 今では小生を遥かに超えて偉くなってやがる…

 

 それより一番困るのは、結婚式の招待状である。

 普段、偉そうな事を言っている手前、友達レベルの祝儀では格好が着かない…

 涙を堪え人に借りて対面を保つが、ただ招待状が月に二通も届く時がある、流石に生活を圧迫するので身内を〇ろしてやり過ごすしかない。

 最後に、これは私見であるが、仕事が出来る者と出来ない者の小生なりの見分け方を綴る。

「廻りの動きを観て仕事を先回りする者」

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