うま味調味料の賛否(2)

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予約した時間、店に行くと店主が笑顔で迎え入れてくれた。犯罪者の目をしている様に思えた。

小生は銀行で15万円を下して、もう覚悟はできている。処刑台に連れていかれる時の心境とはこの様なものだろうな…

お通しから始まり、次々と料理が運ばれてくる。周りでは順に来店があり、満席近くになる。店主も奥さんも天手古舞している。

しかし、周りを見渡すと来店客は七十を優に越している先輩な方ばかり、後で聞いた話だが来店のひとたちは、何某の議員さん、何某の弁護士さん、何某の専門学校の理事長さん、などなど社会的地位の高い歴々とした人達である。

その人たちと話す機会は多々あったが、当時三十代の小生はまるでガキ扱い。店の格式に己の存在が違和感を感じた…

小生は、すごく場違いな店に居るのかもしれない…

やがてスタッフも満腹になり、覚悟を決めて恐る恐る「おあいそ…」のお願い。

店主の「おうっ!一万円だけ置いてけ!」

前回、小生が15分ほど滞在した金額と同じ…

この店主は、本当に昭和の人なんだな…

恐らく、他の客はもっと高いと思う。相手の格を観て値段を決めているのだろう。

先に出た人は何を食べたか知らないが、一人で三万円って聞こえたから…

小生の場合は、僅か一万円の評価なのである…    なんだか微妙な気持ちになる…

「有難うございました、勉強させて頂きました。」

と告げてる。

帰りの車中、同伴したスタッフに「美味かったか?」と尋ねると「…」みな無言である。

普段でもまかないで食べる物の評価については、忖度が絶対ない様にきつく云ってある。

むしろ新メニューでは、「悪いと思われる所を探せ」みたいなのをスタッフみんなでやったな。

スタッフの意見、「何か一味足りない」「味が無い」「うま味が足らない」

辛辣である…

小生の若い頃は、うま味調味料は“悪”であったな…

「料理人がそんな物をつかってはいけない」みたいな風潮があり、件の店も一切使っていない。

然し、すごい高級店なら例外だろうが当時でもフレンチやイタリアンの店は粉末のコンソメを使っていた。… 中華に至ってはうま味調味料が無いと厨房が成り立たない。

連れて行ったスタッフ達は普段の食事でうま味調味料に慣らされているのだな。

だから、素材の味を生かす繊細な、昔ながらの日本料理では物足りない…

 恐らくこれからの世代は皆そうなるだろうな…

 件の店は、時間を掛けて自家製の味噌を作り、大葉などのあしらい物は奥さんが店の裏で栽培している…              その内、醤油も自家製にするのではと思うほどである…

 誰かがうま味調味料を勧めた所で聞くわけがない…

 然し、言葉が悪いが来客するのは高齢者ばかり、来年のこの時期にまみえる事がどうか解らない様な人も居る。              だから年々減るのは判り切っている…

しかし件の店主が、初めて小生の店に来店してつまみ食いした大皿料理、「旨いもん出しとるやないか」とお褒めのお言葉を頂きましたが、うま味調味料、一杯使ってました。

世代に依って味覚は変わって往く。伝統は守るべきだが、時代について往かなければ意味が無いと思う。



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